9月27日(木)~29日(土)、朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターにて第14回日本骨粗鬆症学会 骨ドック・健診分科会が開催され、秋田大学大学院 医学系研究科より、当社の姿勢測定器PA200を使用した学会発表がありました。

中高年者の下肢および脊柱アライメントと筋力が転倒に与える影響

秋田大学 大学院 医学系研究科
医学専攻機能展開医学系 整形外科学講座
工藤 大輔、宮腰 尚久、本郷 道生、
粕川 雄司、石川 慶紀、島田 洋一

【目的】

骨粗鬆症を伴う高齢者では、脊柱変形の進行、バランス能力や筋力の低下により転倒及び骨折の危険性が高まる。われわれはこれまで特に腰椎の後弯、脊柱の前傾、背筋力が転倒に重要な因子であることを報告してきた。しかし、立位での下肢アライメントを含めた転倒への影響はいまだ不明である。今回、中高年者の下肢および脊柱アライメント、筋力、QOL を調査し、転倒に与える影響を検討した。

【方法】

住民健診に参加した50 歳以上の一般住民183 名(男性84名、女性99 名)、平均71.7 歳(52-88 歳)を対象とした。アンケートにより転倒の既往を調査し、過去1年間に転倒しそうになったことがある、または転倒した者を転倒群とし、いずれもない者を非転倒群とした。脊柱と下肢アライメントの測定は姿勢測定器PA200(ザ・ビッグスポーツ、大阪)を使用し、C7 棘突起、L5 棘突起、大転子、脛骨外顆、腓骨外果に体表マーカーを設置して立位側面を撮影、脊柱前傾、膝関節屈曲角度を計測した。さらに握力、股関節屈曲筋力、膝伸展筋力、等尺性背筋力を測定した。QOL 評価にはSF-36 を用いた。これらの評価項目については転倒群と非転倒群を比較した。

【結果】

転倒群は57 名(男22、女35)、非転倒群は126 名(男62、女64)であった。年齢は、転倒群で有意に高く(転倒群:73.1 歳/非転倒群:70.2 歳、p<0.05)、BMI は有意差がなかった。脊柱と下肢アライメント計測では、転倒群は脊柱の前傾が大きく(22.7 cm/10.9 cm、p<0.05)、膝関節屈曲角度も増大していた(8.0°/5.6°、p<0.05)。転倒群では、握力、股関節屈曲筋力、膝関節伸展筋力、背筋力のすべてで有意に低かった。これらの因子のうち、多重ロジスティック回帰分析では握力(p<0.05、オッズ比0.955、95%信頼区間0.914-0.997)が有意な因子であった。SF-36 では身体機能、身体役割制限、痛み、活力の項目で転倒群が有意に低値であった。

【考察及び結論】

転倒群では、これまでの研究結果と同様に脊柱がより前傾していたが、今回新たに膝の屈曲角度が大きいことがわかった。したがって、膝屈曲角度を含めた下肢のアライメントは、転倒に重要な因子と考えられる。また転倒群では四肢、体幹の筋力が低下し、特に握力測定は全身の筋力低下と転倒リスクの評価に有用と考える。